3.評価と選定
UIサウンド9原則
ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10原則(*1)にならい、「UIサウンド9原則」を記します(10原則にしたかったのですが、9原則になってしまいました)。
発音設計・発音制御に関わること、サウンドデザインに関わることが網羅されています。開発者/サウンドデザイナーともに、この9原則を確認しながら設計/デザインを行ったり、評価のチェックリストとしても使って頂けるかと思います。
(*1) Jakob Nielsen (原著):ユーザビリティエンジニアリング原論, 東京電機大学出版局(2002)
1.UIサウンド(報知音、操作反応音)がそれを必要とする人に「聞こえる」
- システムが利用される環境で、UIサウンドが聞こえる。(環境音マスキングへの配慮)
- システムを利用するあらゆる人に、UIサウンドが聞こえる。(年齢による聴覚特性への配慮)
- 異なるUIサウンドが別々のサウンドとして聞き分けられる。
- 2種類以上のUIサウンドが同時に鳴る状況でも、サウンドの分離が容易である。
2.報知音が適切に「メッセージを伝える」
- 報知(お知らせ・メッセージ)の内容がわかる。特にユーザが対処する必要があるかどうか(対処必要性の有無)が必ずわかる。
- 報知の内容が、できるだけ記憶に頼らず直感的にわかる。(発音頻度が低い音ほど直感性にわかる)
- システムエラーの即時の気づきを促している。
- メッセージの理解を間違わない(他メディアでの表示があれば確定できなくてもよいが、誤った理解(誤解)してしまわない)
- 適切なタイミングと繰り返し回数でメッセージを伝えている。
- 利用者がシステムから離れた場所にいる場合にも、伝えるべき情報が適切に伝わる。
- どのシステム(機器)からなっている音であるかが、ただちにわかる。(冷蔵庫がなっているのにレンジと思わないように)
- 情報の重要度と緊急度に応じて、適切な明示レベルのサウンドが利用されている。
3.操作反応音が「操作の確実性と快適性を向上」させる
- 操作反応音が操作後ただちに(遅延なく)発音されている。
- 操作が受け付けられたことが、ただちにわかる。必要に応じて「どのような」操作が受け付けられたのかもサウンドでわかる。
- 誤操作の即時の気づきを促せる。
- 誤ったトリガで発音が起こらない。(ボタンを押しただけで入力が受け付けられていないのに、操作反応音が鳴るなど)
- 音を聞いてメッセージの理解を間違わない。(キャンセルしていないのにキャンセルしたと思ってしまう)
- 操作反応音を伴うことで、操作が快適である。
- 操作の重要度に応じて、適切な明示レベルのサウンドが利用されている。
- 2種類以上の音が同時に鳴ったとき(報知音などと重なって)に聞き分けが容易である。
4.「一貫性を保ち標準に倣う」
- 同じメッセージは同じ音で表す。また、共通性のあるメッセージは共通性のある音で表す。
- 報知音(警報含む)、操作音等の利用について規定されたISO、JISあるいは業界規格やガイドラインがある場合は、原則それに則り、また侵害(規定音を逆のメッセージで使う等)もしていない。
5.「他メディアとの併用と補完」が行われている
- 視覚表示や自然作動音でメッセージが必ず理解できるなら付加的なUIサウンドは使わない。但し、加えて注意を促す必要がある場合はこの限りではない。
- 視覚情報が使えない操作状況で、必要不可欠な情報をUIサウンドで得ることができる。
(視覚情報が想定外に遮断されたときも、音を頼りにシステムを危険から回避/操作できる。) - 音だけでメッセージがわからなかった場合、視覚表示等でメッセージの確認をすることができる。
6.サウンドの「快適性が確保」されている
- 最小限のサウンド利用である。
- システムの利用者にとって不快でないサウンドである。(発音頻度、音質)
- システムが在る環境に居る人々が不快に感じない。
- システムが在る環境および時間にミスマッチでない。(静寂な環境、夜間など)
- システムの利用頻度に準じて、サウンドを頻回(毎日など)聞いてもくどくない。
- 言われなくてもわかっている!うるさい!と利用者に思わせない。
- 利用者および周囲の人々の諸活動や会話を邪魔しない。ただし、注意・警告の場合はこの限りではない。
- 問題なくその機器が利用できたが、「どんな音」が鳴っていたかはよく覚えていない(これは悪くない、むしろ良い)。
7.サウンドで「感性価値」が付与されている
- 操作フローを通して美しいサウンドフローを奏でている。
- 製品のビジュアルイメージや利用環境に合致したイメージを表現している。
- サウンドセット全体の印象が、システム提供側が表したい印象になっている。
- サウンドセットとして印象の一貫性が保てている。
8.サウンド利用の「柔軟性」がある
- 利用者がサウンドのon/off(可能な部分)、音量調節、セット選択等を制御できる。
- 利用者は好みやニーズによってサウンドセットを変更できる。
- 環境騒音に応じて音量が自動的に調整される。
9.ヘルプとドキュメントが準備されている
- UIサウンドの情報と対処方法について、ヘルプやドキュメントが準備されている。