プロダクトのUIサウンドデザイン入門 for UX - ui sound for ux

1."発音設計"の考え方とプロセス

発音設計

■「どこで」「何のために」サウンドを使うかを決める

UIサウンドデザインの最重要ステップです。操作フロー図と、必要に応じて実機も用いながら、フローのどこで操作反応音と報知音を利用するのかを決めていきます。このとき、何を目的に発音するのかも明確にします。

発音の目的とは、例えば「情報伝達に不可欠な音(これ以外の情報伝達手段がない)」、「操作性やわかりやすさを向上させるための音」、「イメージ演出のための音」といったことです。

報知音(例:終了音、エラー音)は、UIに不可欠な場合が多くあります。ユーザが機器から離れた所にいるとき、機器の状態を知らせるサウンドは必要でしょう。近くにいてもディスプレイを見ているのでなければやはりサウンドは効果的でしょう。

操作反応音については、手応えのある物理ボタンには操作反応音はつけなくてもよいかもしれません。手応えの少ないタッチパネルボタンについては、操作反応音の有効性が示されています。では、一つの機器に物理ボタンとタッチパネルボタンの両方が使われている場合はどうしましょうか?操作フローを参照し、操作感に連続性を持たせるために両方とも使った方がいい場合もあるでしょうし、タッチパネルボタンのみでいい場合もあるでしょう。

和氣, 今井, 西崎, 光本, 長田:タッチパネル操作における操作反応音の有効性~視覚フィードバック有無の視点から~ ヒューマンインタフェース学会論文誌Vol19. No.1, pp61-69, 2017

■UIサウンド利用の程度

UI全体としてどの程度のサウンドを利用するかを考えながら、発音設計を行いましょう。機器の複雑さや性質によって多くのUIサウンドを上手く利用すべきものあるでしょうし、静寂を要する環境で利用されるような機器などサウンドの利用は最小限にすべきものもあるでしょう。

「サウンドを使わない」決断をすることもまた重要です。UIサウンドを新しくしよう、というときは、どうしても「サウンドをつける」ことばかり考えてしまいますが、サウンドを使わないと決断をすることも大切です。使いすぎは逆効果となることもあります。

■何種類のサウンドを使うか

今度は、一機器で何種類の異なるUIサウンドを利用するか、という視点です。どれくらい情報を細分化しそれぞれを異なる音で表すか、を決める必要があります。

例えば複数の種類のエラーがあるとき、「エラーの種類ごとに異なる報知音」を使うのか、「1種類の音でエラーであること」だけを伝えるのかといったことです。操作反応音についても同様です。機能選択ボタン、スタートボタン、キャンセルボタンといったボタンの目的によって異なる操作反応音を用いることもできれば、全ボタンに同じ音を使うこともできます。対象機器ではどうするのがよいのか検討しましょう。

ところで、「一機器あたり何種類」くらいのサウンドが適切でしょうか?詳細に情報を表そうとすると音の種類は多くなります。しかし多すぎるとわかりにくくなり、覚えられもしません。UI構造の複雑さや、ユーザの機器利用頻度や習熟度にもよるため、一概に何種類までとは言えませんが、経験的にはメインの操作フローで出てくる音を5種類以下にするのがよいと考えています。どうしても多くなる場合は音声利用や他モーダルの利用も含めて、UI全体を見直す必要もあるでしょう。

■何秒後に何秒間発音する?

操作反応音は「操作時ただちに発音」するべきで、報知音については終了音やエラー音はそれが生じたタイミングで発音するのが基本です(洗濯が終わったら終了音)。しかし、いつもそれでよいとは限りません。

例えば冷蔵庫扉の開け放し報知音は、扉を開けて何秒後になるのがよいでしょうか?早すぎると「ちょっと待ってよ~」と思うでしょう。遅すぎるとユーザはもうその場にいないかもしれません。次に、その開け放し報知音は、扉が閉められるまで鳴りっぱなしがいいでしょうか?何秒かで一度止まって、また再度鳴るのがいいでしょうか?止まってから再度鳴るまでの時間は??

別の観点では、夜中に報知音が鳴ってほしくないユーザもいるでしょう。その場合、指定時間帯は音が鳴らない設定にできるのがよいかもしれません。

これらのことは、その機器を使うユーザの行動や状況をよく調査して検討する必要があります。発音タイミングを見誤ると、ユーザに大きな不快感を抱かせることにもなりかねません。
なお、関連する事項として次ページの【発音制御】もご覧下さい。

■発音フローのシミュレーション

どこで何のためにUIサウンドを使うかが決まったら、操作フロー上での各サウンドの流れと発音頻度を確認します。例えばコピー機で、コピー枚数を入力するための数値ボタンや印刷の濃さ選択のボタンは、続けて何度も押される可能性があるでしょう。一方、コピー開始の報知音は一操作フローで一回だけの発音でしょう。用紙切れの報知音は、一操作フローより発音頻度は低く、紙詰まりエラー報知はもっと低いでしょう。このように、各サウンドの発音の流れと発音頻度をUI操作フローにそって確認します。仮の擬音語を使って音の流れを口頭で発してみるのもおすすめです。

■各サウンドの明示レベルを定める

これまでに検討した各UIサウンドの発音目的と発音頻度に基づいて、各サウンドの「明示レベル」を定めます。「明示レベル」とは、そのサウンドが「どのくらいの聞こえや印象の強さ」を持つ音としてデザインされるべきかの指標です。

現在私たちが利用している明示レベルの基準を表に示します。基本的には重要な操作や重要な報知のサウンドほど明示レベルを高くします。つまり必ず聞こえて、印象の強い音である必要があるということです。明示レベルを決める際に発音頻度も考慮するべき理由は、明示レベルの高い音が頻繁になるとうるさくなるからです。

■デザイン仕様書の作成

ここまでに行った設計をまとめ、デザイン仕様書を作りましょう。これは制作するサウンドの一覧表であり、音の目的や発音頻度、明示レベルも併せて記載します。サウンド発注時に、サウンドデザイナーへ伝えるべき内容の核となるものです。