3.評価と選定
評価の方法
■どのサウンドセットがいいんですか?
「どのサウンドセットが一番いいのか、数字がほしいんだけど。」、「ユーザ評価だけだと説得しにくいんだよね。だって個人差あるでしょ?」
はい、もっともなご意見ご要望です。それでも評価はユーザ評価であり、主観評価が主にもなります。人にとっての使いやすさや聞き心地を目指す以上、そうするのがベストなのです。
■機能面(使いやすさ)と意匠面(イメージ)を切り分けて評価する
機能面はUIサウンドによる使いやすさ(UI)の観点です。音でメッセージが伝わるか、操作のフィードバック感が得られるか、評価のポイントを定め実操作に近い評価環境を整えられれば、UIサウンドの機能面の評価を行うことが可能です。
ところで、この機能面については音響心理学やヒューマンインタフェース分野での知見がある程度存在します。サウンドデザイン時にこれらをできるだけ活用してください(本サイトの「サウンドデザインノウハウ」でこれらの知見について紹介をしています。)ただし、知見のみからサウンドは作れません。デザイナーが知見を取り込みながらサウンドデザインを行い、できたサウンドを評価するという流れになります。
一方の意匠面の評価は人による差が出やすい部分です。音が表すイメージの認識についてはまだ共通性が高いものの、UIサウンドとしての好ましさや、使いたいと思うかどうかは、ユーザの年代や性別、趣向などによって大きく異なる場合がありますので注意が必要です。
機能面と意匠面、またイメージに認識と好みを切り分けて評価の判断を行う必要があるでしょう。
■ユーザ評価の方法
ユーザ評価はできる限り実際に近い環境で、対象機のタスクを実施してもらうことで実施します。実機そのものを使って評価ができると一番よいのですが、難しい場合UIプロトタイプ(タブレット上等での模擬操作)を使う場合もあります。受動的にサウンドを聞くだけでなく、操作を行いながら評価を行うことが大切です。
評価は機器が利用される現場で行うことが理想です。周囲環境の影響を含めて評価できるからです。実験室で行う場合は環境音を実験室に流すなど、音環境を現場にできるだけ近づけるような工夫をしましょう。
また、直接ユーザだけでなく間接的聴取者に対しての評価を行うことも検討しましょう。
■主観評価と定量評価
評価は主としてサウンドセットに対する主観評価になります。操作タスクを実施し一連の流れを体験して、次のような評価を行います。
・サウンドセット全体の評価
「操作のしやすさ」、「状態のわかりやすさ」、また「好ましさ」「継続利用性」「環境との調和」など、アンケートあるいはインタビューによる全体の操作感や印象の評価
・サウンドセット同士の比較評価
複数のサウンドセットがある場合の比較評価や順位付け評価
・個別のサウンドの評価
特定のサウンドに着目して、それが表すメッセージを理解できるかといった評価
評価タスクを実施する中で、タスク達成時間、誤操作率、タスク達成率等を計測し、必要な条件を確保できるかを確認することもできます。サウンドデザインによって定量評価に差が出ることは多くはありませんが、音の有無(どこでUIサウンドを使うか)や発音制御の違いによってタスク達成時間の違いが生じるなど、発音設計の効果を計るのには有効です。