プロダクトのUIサウンドデザイン入門 for UX - ui sound for ux

2.サウンドデザインの発注

サウンドデザインの難しさ

サウンドデザインの難しさ

■ロジカルアプローチとサウンドデザイン

UIサウンドをパラメータの組み合わせでロジカルに設計したい、論理的にベストだと説明できるサウンドがほしい、サウンドで特許を取得したい、というのは技術者の方からしばしば受けるリクエストです。

いわゆるビープ(時間変動のない定常音)などで、目的の限られたサウンドを作るならばそれもできるでしょう。ですが、自由なサウンドデザインでリッチにメッセージやイメージを表現しようとするならば、申し訳ありませんがパラメータの積み上げだけでは対応しきれません。なぜなら、サウンドのパラメータは多岐に渡り、多層であり、印象に対するそれらの相互作用は強く、また聞く側の受け取り方も環境や状況によって変化するからです。

■多岐にわたるサウンドデザインのパラメータ

UIサウンドセットのデザインは3段階です。

(1) サウンド(一つの音)
(2) サウンドの組み合わせから成る個々のUIサウンド(報知音や操作反応音)
(3) UIサウンドの組み合わせから成るUIサウンドセット

それぞれにどんなデザイン要素(パラメータ)があるかをごく簡単に記します。

(1) サウンド(1つの音)
音色、高さ、大きさ、長さ、とそれらの一音の中での時間変動

(2) UIサウンド(1つの報知音/操作反応音)
サウンドそのもの、和音(高さの重なり)、連音(時間軸での高さの変動)、リズム(時間軸での発音パターン)、繰返しの有無と回数、全体の長さなど

(3) UIサウンドセット
複数音の聞き分けやすさの確保、セット全体の調性感と各音の音高配置、連なって鳴る報知音の繋がりによる印象の調整

いずれかの要素を変化させていくとき、メッセージ性も連続的に変化するというものではなく(例えば、2音の和音の印象は、音程差が大きくなる程だんだん~になるというものではありません)、またそれぞれの要素はお互いに複雑に影響を及ぼし合いもします(例えば、優しい音色でも不協和音であれば不快など)。

■デザインアプローチによるUIサウンドデザイン

音響心理学や音楽理論は私たちに大きな知見を与えてくれます。ですが、多種複数のサウンドを複数の目的のために用いる実機のUIサウンドデザインについて、音の要素の積み上げ、つまりロジカルアプローチのみでは限界があると言わざるを得ません。

そのため筆者は「音響・音楽的知見を踏まえながらも、主軸はデザインアプローチでサウンドデザインを行う。そしてできたものを評価・検証し、分析的に効果とその理由を説明する。」という、このサイトで説明している手法を提案しています。

デザインアプローチを得意とするのはサウンドデザイナーです。サウンドデザイナーと技術開発者(そしてできれば統合ディレクションを行う者)が協同でUIサウンドデザインを行うのが、現実的にベストな方法であると思っています。