プロダクトのUIサウンドデザイン入門 for UX - ui sound for ux

3.評価と選定

サウンド選定の注意点

■初めて聞く音と聞き慣れた音

サウンドセットの比較評価に現状のUIサウンドを含める場合、少々注意が必要です。人には「使い慣れた音を好む」傾向があるようなのです。つまり、これまで使っていたサウンドと新しいサウンドを比較したとき、使い慣れた音の方がよいという結果になる場合が少なからずあります。これは音に限らずUI全体にみられる傾向で、皆さんもソフトを更新したらGUIが変わり、一時的に使い勝手が悪くなったと不満に思った経験があるでしょう。

しかし、初めて使うときの評価があまりよくなくても、しばらくそのサウンドで機器利用を続けるうちに評価が上がってくることがわかってきました(*1)。結果的には評価が逆転することが大いに期待できます。

一方で、実は逆の注意も必要です。はじめて聞いたサウンドが好ましいとされても、それが毎日聞き続けるのにふさわしいサウンドであるとは限りません。経験上、「デモウケ」するサウンド(少々印象が強い個性的な音)と、毎日聞いてしっくりくるサウンドは明らかに異なると感じています。

実験者はこれらの点に注意しながら評価を行い、サウンドセットの最終選択を行う必要があります。

※1 発表準備中

■皆の好みをくみ取ると失敗する

意匠面の評価は個人差が出やすいと書きましたが、サウンドデザインが成功した事例を見ると、誰か一人の人物が強いリーダーシップを持って採用の決断をしていた場合が多いようです。ディレクターとしての人物がUIとサウンドイメージを把握し、評価結果を参考にしながら、採用する音を決める方法が採れると良いでしょう。

いろいろな人の好みをまんべんなく取り入れようとすると、時間がかかるばかりではなく、結果的に統一感がないか、あるいは何の特徴もないサウンドになってしまいがちです。ディレクターの立場にある方は、ターゲットユーザ層の好みは把握しつつも、最後は自分の感性に自信を持って決断しましょう。

■縁の下の力持ち

サウンドは縁の下の力持ちです。全体に大きな影響を与えるにもかかわらず、よくても気づかれにくいものです。

映画でのサウンドエフェクトは、状況や感情を伝え、臨場感の演出に必須ですが、高い臨場感がサウンドのおかげだとはほとんど気づいてはもらえません。良いサウンド、自然なサウンドでればあるほど、悲しいかな気づかれないのです。

製品や操作に沿う自然な音は目立つものではなく、音は印象に残らない場合もあるでしょう。それは悪いことではなくむしろ良い評価であるとも言えるのです。